宇都宮市で「終の棲家」を – シニア世代が考えるべきリフォームとは?
年齢を重ねるとともに、暮らしに対する考え方や住まいへのニーズも大きく変わってきます。若い頃は気にならなかった小さな段差や寒さも、高齢になると身体への負担やリスクにつながることがあります。こうした背景から、近年では「終の棲家」として、自宅をより安全で快適な空間へと整えようとする動きが広がっています。
宇都宮市では高齢化が進行しており、住み慣れた家で自分らしい老後を送りたいと考える方が増えていると予想されます。そこで注目されているのが、シニア世代に向けた住まいのリフォームです。
本記事では、宇都宮市における高齢者の住環境の実情を踏まえながら、終の棲家づくりに必要なリフォームの考え方や具体例をご紹介していきます。
シニア世代がリフォームを検討すべき理由
高齢になると、住まいのちょっとした不便が思わぬケガや負担につながります。安全かつ快適に暮らすためには、年齢に応じた住まいの見直しが重要です。
例えば、転倒による骨折や、浴室でのヒートショックといった事故は、住宅環境が整っていれば未然に防げるケースも多くあります。暮らし慣れた家を「終の棲家」とするためには、今のうちから安心・安全な住まいづくりに取り組むことが大切です。
安心して暮らせる終の棲家の重要性
誰もが「できる限り住み慣れた自宅で最期まで暮らしたい」と願うものです。実際に、全国調査によると「人生の最期を自宅で迎えたい」と答えた人は58.8%にのぼり(※)、多くの方が施設ではなく自宅での生活を望んでいることが分かります。
こうした希望を叶えるためには、自宅を高齢期に適した住環境へ整備することが欠かせません。例えば、段差をなくしたり、手すりを設置したりといったリフォームは、転倒リスクの軽減や介助のしやすさにつながります。また、トイレや浴室などの水回りを使いやすくすることで、本人の自立度を高く保つことも可能です。
このように、自宅を「終の棲家」として安心して暮らし続けるためのリフォームは、日々の生活の質(QOL)を大きく向上させる重要なステップです。
※出典:日本財団.「人生の最終段階に関する意識調査」,(参照2021-03-29)
宇都宮市における高齢化と住宅事情
宇都宮市でも全国同様に高齢化が進んでおり、2023年の高齢化率は26.1%に達しています。この傾向は今後も続き、2040年には31.8%にまで上昇する見通しです(※)。
また宇都宮市では、高齢者の多くが持ち家に居住しています。宇都宮市の調査によると、65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、約8割以上が自宅を所有しています(※)。このことは、今ある住宅をリフォームしながら暮らし続けることが、多くの高齢者にとって現実的であることを意味します。
ただし、昭和・平成期に建てられた住宅には、バリアフリー化や断熱性能の面で課題が多く残っています。段差の多さや断熱性の低さは、冬の底冷えが厳しい宇都宮ではヒートショックのリスクを高めます。また、郊外型の多層住宅が多く、加齢とともに上下階の移動が負担となるケースも少なくありません。
こうした地域特有の事情から、宇都宮市においては、高齢者が安心して暮らせる住まいづくりの必要性がますます高まっているのです。
※参考:宇都宮市.「高齢化率の将来推計」,(参照2020-08-20).
※参考:宇都宮市.「住宅に関する統計資料」,(参照2012-08-02).
終の棲家として理想の間取りとは?
高齢期に入ると、暮らしやすい住まいの条件は若い頃とは異なってきます。特に重要となるのが「生活動線の短さ」や「段差の少なさ」といった間取りの工夫です。これは、自立した生活を長く続けるためだけでなく、家族や介助者との共同生活にも大きく影響します。
終の棲家として長く安心して暮らすためには、ただ設備を整えるだけでなく、住まい全体のレイアウトそのものを見直す必要があります。ここでは、シニア世代が快適に過ごせる間取りの具体的なポイントをご紹介します。
ワンフロアで生活が完結する
高齢になると、階段の昇り降りは想像以上に負担となります。つまずきや転落のリスクも高まるため、生活に必要な機能がすべて同じフロアにそろっている間取りが理想的です。
特に平屋住宅であれば、上下の移動を気にすることなく、すべての部屋へスムーズにアクセスできます。二階建て以上の場合でも、以下のような工夫を取り入れることで、ワンフロア生活を実現できます。
- 1階に寝室・トイレ・浴室・キッチンを集約
- 現在2階にある寝室を1階に移設
- 階段昇降機の設置を検討
生活動線を短くすることで、移動の負担が減るだけでなく、車椅子や歩行器が必要になった際にも対応しやすくなります。今後の変化を見据えた間取りの見直しは、将来の安心につながります。
寝室とトイレ・浴室の距離が近い
高齢者に多い事故のひとつが、夜間のトイレや入浴時の転倒です。特に寝室からトイレや浴室までの距離が遠いと、暗がりでの移動や寒暖差によるヒートショックのリスクが高まります。
そのため、寝室の近くに水回りを配置することが安全性を高めるうえで有効です。理想的な間取りの例としては以下のようなものが挙げられます。
- 寝室のすぐ隣にトイレがある
- 脱衣所や浴室が寝室から数歩の範囲にある
- 廊下を挟まずにアクセスできるように配置する
もし間取りの変更が難しい場合は、照明を足元灯や人感センサーに変更したり、手すりを設置したりすることで、安全性を高めることができます。移動距離を最小限に抑えることが、快適で安心な生活の鍵となります。
廊下や出入口が広く、段差が少ない
室内を移動しやすくするためには、廊下や出入口の幅にも配慮が必要です。車椅子や歩行器の使用を想定するなら、廊下幅は90cm以上、出入口もそれに見合う広さが理想とされます。
また、通路の途中で方向転換するスペースや、開け閉めがしやすい扉への変更も検討しましょう。具体的な改善ポイントは以下のとおりです。
- 廊下や玄関ホールを広げて通行をスムーズにする
- 開き戸から引き戸へ変更する
- 各部屋への出入口をバリアフリーに整備
さらに、家の中の小さな段差も油断は禁物です。敷居や玄関の上がり框などは、つまずきの原因となりやすいため、スロープやかさ上げによる段差解消が効果的です。介助者の動線も想定し、安心して暮らせる空間を整えましょう。
明るく見通しが良い
視力が衰えやすい高齢者にとって、室内の明るさや見通しの良さは、安全性と心理的安心感の両方に直結します。暗い場所では物が見えづらくなり、転倒や事故のリスクが高まります。
そのため、室内全体を均一に明るく照らす照明計画が重要です。例えば以下のような工夫が効果的です。
- 廊下やトイレに足元灯や人感センサー付き照明を設置
- 窓を大きくして自然光を取り入れる
- リビングからキッチンまで見渡せる間取りにする
視界が開けていると、家族間の見守りにも役立ちますし、独居の場合でも万一の異変に気づきやすくなります。また、窓際の断熱対策としては、複層ガラスや内窓の導入を検討するとよいでしょう。明るく見通しの良い空間は、前向きな気持ちで暮らすための大きな助けとなります。
宇都宮市で利用できるシニア向けリフォーム支援制度
高齢期の暮らしに備えてリフォームを検討する際、気になるのが費用面です。
宇都宮市では、市内に居住する個人を対象に、住宅の改修費用の一部を補助する「宇都宮市住宅改修事業費補助金」制度を実施しています。特にシニア世代にとって有効な制度であり、条件を満たせば最大10万円の補助が受けられます。
制度の概要は以下の通りです。
項目 | 内容 |
補助対象者 | 宇都宮市内に居住し、対象工事を行う個人 |
対象工事 | 必須工事1つ以上(10万円以上)を含む工事 |
補助金額 | 工事費の10%(上限10万円、1,000円未満切り捨て) |
申請タイミング | 工事着工前の事前申請が必須 |
条件 | 市内業者を利用すること、予算上限に達し次第終了 |
この制度の大きな特徴は、「必須工事」を1つ以上含むことが条件である点です。以下のような内容が必須工事に該当します。
- 壁や窓などの断熱性能を高める断熱改修
- 段差解消や手すり設置などのバリアフリー改修
- 多世代同居に対応した水回り設備の増設
上記の必須工事に加えて、次のような「選択工事」も同時に実施することで補助対象に含めることができます。
- 屋根・外壁の塗装・改修
- キッチンや浴室などの設備交換
- 内装(床・壁・天井)の張り替え
例えば、浴室のバリアフリー化(必須工事)とキッチンのリフォーム(選択工事)を一緒に行えば、その両方の費用を合算して補助金を申請できます。
制度の予算には限りがあるため、応募状況によっては早めに募集が終了してしまう場合があります。制度の利用を考えている場合には、まず宇都宮市の公式Webサイトや窓口で最新情報を確認し、早めに申請の準備を進めましょう。
※参考:宇都宮市.「住宅改修事業費補助金」,(参照2024年3月時点).
シニア向けリフォームの具体的な内容
高齢期においては、住まいのちょっとした違和感や使いにくさが、転倒やケガにつながることもあります。こうしたリスクを避けるためには、生活環境を見直し、自分の身体や暮らし方に合ったリフォームを取り入れることが大切です。
例えば段差の解消や手すりの設置といった小さな工夫も、大きな安心につながります。ここからは、シニア世代の住まいにおける具体的なリフォームポイントを順にご紹介していきます。
段差の解消・床材の変更
高齢者の転倒事故の多くは、わずかな段差や滑りやすい床が原因で起こります。敷居や玄関の上がり框、脱衣所と浴室の境目といった日常的に使う場所の段差をなくすことは、安全な住まいづくりの基本です。
段差を解消するための主な方法には以下のようなものがあります。
- 敷居を撤去して床をフラットにする
- 床のかさ上げをして段差を吸収する
- 玄関や廊下にスロープを設置する
また、床材にも注意が必要です。滑りやすいフローリングではなく、防滑性やクッション性に優れた素材に張り替えることで、転倒リスクを軽減できます。
- 廊下や居室には滑り止め加工のフローリングや厚手カーペット
- 脱衣所やトイレには断熱性のあるクッションフロア
- 浴室には水に強く滑りにくい浴室専用床材
特に水回りの床材は、防滑性と断熱性の両立が求められます。高齢者の住まいでは、床は最も頻繁に接触する部分だからこそ、素材選びが安全性を大きく左右します。
手すりの設置
手すりの設置は、費用対効果が高く、比較的手軽にできるリフォームの一つです。移動時の不安を減らし、自力での生活範囲を広げる大きな助けとなります。
代表的な設置場所とポイントは以下の通りです。
玄関 | 靴の脱ぎ履き時や段差昇降時の補助に。縦型・横型両方の手すりがあると安心 |
廊下・階段 | 連続した手すりを取り付けて、伝い歩きができるようにする |
トイレ | 立ち上がりを支えるL字型やコの字型の手すりを設置する |
浴室 | 出入口、浴槽脇、洗い場などに縦型・横型の手すりを配置する |
手すりの位置や高さは利用者の体格や利き手に合わせて調整することが重要です。むやみに設置しても役立つとは限らず、「必要な場所に、使いやすい手すりを、握りやすい高さ・位置に」設置することがポイントです。
浴室・脱衣所の断熱化
寒暖差の激しい冬場、ヒートショックによる事故が高齢者に多く見られます。特に浴室や脱衣所は急激な温度変化が起こりやすく、血圧が大きく変動して心臓や脳に負担がかかります。
このリスクを減らすために有効なのが、浴室と脱衣所の断熱化です。具体的な対策としては以下のようなものがあります。
- 浴室の壁・床・天井に断熱材を追加
- 断熱性の高いユニットバスに交換
- 窓を複層ガラスや内窓に変更して冷気を遮断
加えて、以下の暖房設備も効果的です。
- 浴室暖房乾燥機:入浴前に浴室全体を暖めることで体への負担を軽減
- 脱衣所用パネルヒーター:寒さが集中する足元から暖める
- 床暖房やセンサー付きヒーター:安全で効率的な暖房が可能
宇都宮市の冬は底冷えする日も多く、浴室の断熱対策は命を守るリフォームといえます。入浴中の事故が毎年発生していることからも、浴室環境の改善は優先順位の高いでしょう。
ドアを引き戸に変更
高齢者にとって、開き戸は意外と扱いにくいものです。手前に引く、押し開けるといった動作には力と体のバランスが求められ、車椅子や歩行器を使う場合は特に不便を感じます。
この問題を解決する方法として、「引き戸(スライドドア)」への変更が有効です。引き戸には以下のようなメリットがあります。
- 開閉時にスペースを取らないため、車椅子でも楽に通行できる
- 扉の背後に人が倒れていても開閉しやすい
- 上吊り式や埋込式を選べば段差も発生しにくい
特に以下の場所では引き戸の導入が推奨されます。
- トイレ・浴室:介助者と一緒に出入りしやすくなる
- 寝室・リビング:将来的に介護ベッドを搬入する際も開口部を広く確保できる
また、宇都宮市の住宅改修補助制度では、引き戸への変更もバリアフリー改修の対象工事に含まれています。費用は1カ所あたり数万円から可能で、効果の大きなリフォームの一つです。
使いやすさ・安全性の両面から見ても、引き戸はシニア世代の住まいに積極的に取り入れたい要素といえるでしょう。
まとめ
高齢期を安心・快適に過ごすためには、身体の変化に合わせて住まいを見直すことが重要です。段差の解消や手すりの設置、浴室の断熱や間取りの工夫など、リフォームによって暮らしやすさは大きく変わります。また、宇都宮市には住宅改修補助金や各種ローン制度など、費用面をサポートする仕組みも整っており、前向きに検討しやすい環境が整っています。
「自宅を終の棲家として整える」ことは、将来の安心につながる有意義な備えです。宇都宮市でリフォームを検討される際には、地域密着で多数の施工実績を持つ「ONOYA(オノヤ)」までお気軽にご相談ください。